犬の胆嚢粘液嚢腫

胆嚢とは、胆汁をためておく袋であり、肝臓に隣接した臓器です。胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢内にムチンを主体とする濃縮した胆汁が蓄積する病気です。
胆嚢破裂や胆嚢炎を来すような場合、あるいは総胆管の閉鎖を起こした場合に臨床症状を発現し、手術適応となります。

臨床症状のない段階での手術に踏み切ることについては未だ決定的な指針はない

ホルモン疾患との関連性

胆嚢粘液嚢腫に関しては、高脂血症以外にも、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症との関連性など、様々な要因について検討がされています。
基礎疾患・併発疾患が、胆嚢疾患を悪化、進行させる要因になっていることもあり、その治療は重要です。

甲状腺機能低下症

  • 胆嚢粘液嚢腫の発生率が3倍高い
  • 胆嚢の低収縮状態
  • 胆汁組成の変化(ムチンの分泌亢進)
  • Oddiの括約筋の緊張亢進

⇒胆汁の長期停滞を引き起こす

副腎皮質機能亢進症

  • 胆嚢粘液嚢腫の発生率が29倍高い
  • 経口での副腎皮質ステロイドの投与では胆汁組成に変化なし

⇒副腎皮質ステロイド薬の投与との関連性は不明な点が残されています

胆嚢粘液嚢腫 【診断】

胆嚢粘液嚢腫は超音波検査にて診断が可能であり、胆嚢内は粘稠性の高い粘液により、胆泥が中心部へと集積します。
胆嚢壁周囲組織のエコー源性の上昇が認められる場合は、部分的な胆嚢破裂が疑われます。

胆嚢粘液嚢腫 【診断】

胆嚢粘液嚢腫は単独では臨床症状を示すことは少なく、病変がどの程度の時間をかけて進行し、症状を呈するかは不明です。 胆嚢破裂や胆嚢炎を来すような場合、あるいは総胆管の閉鎖を起こした場合に臨床症状を発現します。

胆嚢粘液嚢腫 【治療の実際】

犬の胆嚢粘液嚢腫(術後死亡率は14%に改善)
外科的治療成績は、胆嚢破裂の有無、胆汁の細菌感染の有無に関係なし

胆嚢外科の治療成績は年々改善されています。より早期に診断・外科的治療を実施できれば、その予後は改善します。しかし、胆汁性腹膜炎を併発している場合、周術期の死亡率は、40%を超えるといわれており、周術期の死亡率が非常に高い病気です。

胆嚢粘液嚢腫 【治療の実際】

術中所見①【開腹】

▼アプローチ▼

腹部正中切開と右傍最後肋骨切開を組み合わせて開腹します。これにより、総胆管および十二指腸付近の構造も確認しやすくなります。

手術中の低血圧は膵炎の発症率を高めます。また、術中術後に低血圧認められる場合には、予後が悪いことが報告されている事から、積極的に昇圧剤を使用します。

⇒低血圧(収縮期血圧<100mmHg,平均血圧⋜60mmHg)は予後が悪い

術中所見②【癒着の処理】

▼鎌状間膜・大網・小網が癒着▼

術中所見③【胆嚢牽引】

▼十字縫合の要領で胆嚢を貫通▼

胆嚢断裂のリスクを軽減するため、支持糸を十字縫合の要領で二重に胆嚢に貫通させ牽引します。

術中所見④【胆嚢の剥離】

▼胆嚢窩に強固に密着▼

術中所見⑤【総胆管洗浄・胆嚢管の結紮】

栄養状態が悪い場合、治癒遷延が予測されるため、非吸収糸にて胆嚢管を結紮します。

胆嚢断裂のリスクを軽減するため、支持糸を十字縫合の要領で二重に胆嚢に貫通させ牽引します。

術中所見⑥

▼胆嚢摘出後▼

剥離した肝臓内側右葉および方形葉

肝生検
胆嚢疾患が肝臓疾患と関連している可能性があり、術後の治療の指針となります。

総胆管の完全閉塞【胆汁流出路の迂回】

胆管が重度な損傷を受けていたり、総胆管が完全閉塞している場合は、胆嚢が疾患に直接的に関与していなければ、胆汁流出路の迂回手術を適応します。胆嚢と小腸(十二指腸または空腸)を吻合する手術です。胆嚢および小腸に過度な張力かからない部位で、吻合予定部位を選択します。

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