口腔内腫瘍は、歯肉、頬粘膜、口唇粘膜、舌、扁桃あるいは歯の成分より生じる腫瘍です。

犬や猫において口腔内腫瘍は、比較的多く認められる腫瘍です。口腔疾患の動物は、流涎、嚥下困難、食欲不振そして口腔からの出血または悪臭のために来院されます。
また、健康診断により、無症状の状態で見つかるケースもあります。

• エプーリス
• 線維腫
• ウイルス性乳頭腫
• 棘細胞性エナメル上皮腫※(歯原性腫瘍)など

※転移はしませんが、骨を溶かしながら浸潤します。

※局所浸潤性が強く、腫瘤のみを切除しても再発することが多いです。

• 悪性黒色腫
• 扁平上皮癌
• 線維肉腫
• 骨肉腫
• 肥満細胞腫
• リンパ肉腫
• 軟骨肉腫など

原発病変の診断

採取した組織の病理検査を実施

リンパ節転移の診断

FNB(FNA)を実施し評価します

遠隔転移の診断→治療方針の決定【手術方法の決定】

口腔内腫瘍の発生部位は多岐にわたるため、以下に示した項目について慎重に検討し、口腔内腫瘍の切除を検討します。

一般的留意事項

• 十分なマージンを含んで腫瘍の全切除が可能であるか
• 下顎リンパ節、頸部リンパ節への転移の有無
• 腫瘍の発生部位を中心とした画像診断による腫瘍全体の把握
• 肺転移の有無
• 切除後に口腔機能が温存可能であるか
• 切除後の欠損部が再建可能か

鎮静または全身麻酔下で、メスを用いた腫瘤の部分的な切除生検や、TruｰCutによる生検を行い、採取した組織の病理診断を行うことが診断の正確性を高める上で重要です。

切除生検【良性口腔内腫瘍】結紮切離による生検方法

切除生検の結果が良性口腔内腫瘍であれば、経過を観察します。

切除生検の結果が、悪性口腔内腫瘍の場合は、マージン部分を考慮し、積極的な切除手術を検討します。

⇒病理結果が悪性である場合は、切除する領域や切除範囲を決定し、適応する術式を検討します。

切除生検実施部位を含め、吻側の硬口蓋の切除を実施します。

硬口蓋の切断予定線まで、口腔粘膜を歯肉部から剥離します。

上顎骨の切除線をソノキュア(超音波手術器具)にて切離していきます。

切除完了です。

腫瘍の取り残しがないように、切除断端をロンジュールにてトリミングします。

切除断端からの出血をボーンワックスにて止血します。

さらに、止血のための吸収性局所止血剤を挿入します。

（上顎吻側の再建）
吸収糸にて縫合を行います。口唇部にかけて上顎吻側を再建し、手術終了です。

抗がん剤治療

化学療法

• 腫瘍の種類により、術後に抗がん剤治療を実施するケースがあります。

胃瘻（ＰＥＧ）チューブの設置

食事管理

• 術後の食事管理のため、内視鏡にてＰＥＧチューブを設置する場合があります。